デルタ株の脅威、東南アジアの危機が限界点に
香港(CNN) アジアの各国が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生以来最悪の水準となる感染拡大に見舞われている。ワクチン接種率の低さと感染力の強いデルタ株の蔓延(まんえん)が事態の深刻化に拍車をかけている。
日本や中国、韓国でも感染拡大は進んでいるが、デルタ株が大きな脅威となっている東南アジアでは感染者と死者が急増。病床や酸素の不足など、医療の逼迫(ひっぱく)が起きている。
統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、英国やシンガポールといった裕福な国々では人口の半分以上がワクチン接種を済ませているのに対し、ベトナムではワクチン接種を完了した人は人口の1%に満たない。タイでは約5%、フィリピンでは7.2%、地域の感染の中心地となったインドネシアでは7.6%が現在のワクチン接種率だ。
一度はウイルスを抑え込んだ国々が、ワクチン接種率の低さによってデルタ株の猛威にさらされる状況となっている。
ベトナム
昨年ベトナムは、ウイルスを封じ込んだ国の一つに数えられていた。早期の厳格な水際対策が奏功し、国民はこの1年半比較的通常の生活を送ることができていた。世界銀行によればベトナム経済は昨年2.9%の成長を記録している。
ところが今年の4月に入ってから感染が急拡大。保健省によると今月1日には新規感染者が8620人に達し、ホーチミン市では1日の新規感染者数の最多を更新した。米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによれば、これまでのところ同国で確認した感染者17万7813人のうち85%以上は過去1カ月間のみでの感染者となっている。累計の死者数は2327人だが、その約半数は過去1カ月に報告されたものだ。
政府は首都ハノイとホーチミン市で厳格なロックダウン(都市封鎖)を行い、感染拡大に歯止めをかけようとしているが、同時にワクチン供給体制強化の圧力にもさらされている。ジョンズ・ホプキンス大学によると、ベトナムの人口9600万人のうちワクチン接種を完了したのはわずか0.6%だ。