「信じられないほど危険で、気が滅入る」、ウクライナ軍兵士らが語るヘルソン攻防戦の内幕
ウクライナ・ヘルソン市近郊(CNN) ずたずたになった金属、焼け焦げた残骸、割れたガラスが床に散乱している。ウクライナ軍の偵察隊がロシア軍の司令部に突入すると、そんな光景があった。司令部は最近解放されたウクライナ南部の都市、ヘルソンの郊外にある。
「こっちへ来い」。ウクライナ軍の兵士の一人が不意に叫ぶ。「担架と救急箱を持ってこっちに来るんだ」
その直後、掩蔽壕(えんぺいごう)からロシア軍の兵士1人が現れる。脚の裏側を負傷している。ウクライナ軍の兵士らによって床にうつ伏せに寝かされ、応急手当てを受ける。
「自分たちはここにくぎ付けになった。他は全員逃げ出した」「掩蔽壕に落ちて、夜までそこに横たわっていた。味方が来て隊長を連れて行き、それっきりだ。後で戻ってくると言っていたが、誰も来なかった」と、この兵士はウクライナ兵に告げた。
ここでのやり取りはウクライナの偵察隊が記録し、CNNと共有した。その貴重な内容からは、南部の要衝ヘルソンを巡る戦闘の過酷さがうかがえる。最終的にロシア軍は、ドニプロ川西岸の広範な地域から今月初めに撤退。今回の戦争における大きな後退を余儀なくされた。
ウクライナの偵察隊によれば、前出のロシア兵は安全な場所へ連れていかれ、傷の手当ても受けた。だがロシア政府の命令でここに送られた多くの兵士は、もっと異なる結果に直面している。
「ロシア軍はここで大損害を被った」。偵察隊を率いる28歳のアンドリー・ピドリスニー氏はCNNの取材にそう語る。敵陣のごく近くで活動しているため、同氏の部隊はロシア兵の会話や調理の様子、薪(まき)を割る音も耳にするという。
部隊は目視とドローン(無人機)の使用によって標的を特定し、座標を自軍の砲兵隊に伝達する任務を担う。