東部戦線のウクライナ軍、ソ連時代の兵器を21世紀の戦場に導入
ペトロ氏によると、ロシア軍は新たな兵力を次々と送り込んでくる。どれほどの死者が出ようと、ほとんど意に介していないようだという。
ロシア側の死傷者の多さを巡る発言は、ウクライナ側の地方行政トップや一部のロシア兵からも出ている。しかしロシア国防省は先月、軍の損失について戦力全体の1%を超えない水準にとどまっていると主張した。
前出の地下の司令センターは、全ての小部屋がふさがっている。殺害した人数を集計するホワイトボードや簡易ベッド、設定待ちのドローンを入れた箱の置き場所になっているためだ。
「道はぬかるんでいる」「負傷者を素早く避難させたり、弾薬を運んだりできない」(ペトロ氏)
ウクライナ軍の司令官らにとっては、部隊間の意思疎通が欠如しているのも不満の種だ。下級将校の数も足りず、過酷な戦況が数カ月続く中、兵士たちの士気を保つ人材がいない。
さらに前線近くへ向かうと、並木で区切られた農地の中にウクライナ軍の砲兵隊がいて、地下の司令センターと電話でやり取りしている。
隊を率いるトゥマン氏は、手にした携帯電話越しに受け取った標的の座標をノートに書き込む。その内容を大声で兵士に伝えると、兵士はそれを復唱し、スコープをのぞき込んでソ連時代の大砲の照準を合わせる。弾丸はポーランド製だ。発射の衝撃で、ほとんど凍った地面から落ち葉が舞い上がる。弾丸は甲高い音を立てて、地平線目がけて飛び去った。
「我が軍の参謀は、可能な限り多くの弾丸を供給しようとしている」「しかし弾丸の数が少ないのは承知している。ない袖は振れない」(トゥマン氏)