ハマスではないことを証明しなくてはならないイスラエル在住アラブ人

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人生の全てをエルサレム旧市街で過ごしてきたアブー・ネイダーさん/Ivana Kottasova/CNN

人生の全てをエルサレム旧市街で過ごしてきたアブー・ネイダーさん/Ivana Kottasova/CNN

「どこに権利がある?」

アブー・ネイダーさんはエルサレム旧市街で49年間小さなカフェを経営している。カフェのある建物で生まれ、以来ずっとここで暮らしている。

多くのパレスチナ人同様、ネイダーさんもイスラエル永住権を持っているが、市民権はない。ネイダーさんは市民権を取りたいと思ったことは一度もないとCNNに語った。「何のために? 権利のため? どこに権利がある?」

ネイダーさんには娘5人息子2人、合計7人の子どもと24人の孫がいる。そのうち何人かは市内の別の場所で暮らしているが、ネイダーさんの家を訪れることができない場合もある。エルサレムではよくあることだが、緊張が高まるとイスラエル警察はしばしば旧市街への入場を制限し、そこに定住所があるか、あるいは一定年齢以上のパレスチナ人しか通行することができない。

ブトゥさんによれば、永住権を持つ市民の移動制限は差別のほんの一例に過ぎない。市民権を持っていても標的にされるケースもあるという。

「私のような人々が特定の町に入ることを禁じるなど、イスラエル市民権を持つパレスチナ人を直接的・間接的に差別する法律がたくさんある」とブトゥさんは言い、特定地域の町や村に「入場委員会」を設置することを認めた法律に言及した。こうした委員会は、コミュニティーの「社会的・文化的構造」に「そぐわない」と判断した人物の入場を禁じる権限を持つ。

問題の法律は今年に入って、適用範囲が400世帯の集落から700世帯の集落に拡大された。イスラエルの少数派アラブ人の権利を訴えるNGO団体「Adalah」によると、適用範囲の拡大で全自治体の41%、国土の80%が対象になったという。

「この国でパレスチナ人として暮らすためには、慣れ親しんだ場所で生活や仕事ができる安全な場所、安心してアラブ語を話すことができ、政治思想が知られ、言葉遣いを気にしなくていい安全な場所を築き上げるか、完全に反対側と同化するかのいずれかだ。その中間は完全に苦痛でしかない」とブトゥさんは言う。「だが完全に同化したとしても、疑問符はついて回る」

ネイダーさんのカフェで出されるコーヒーは濃いめで、非常に甘い。「ジェズベ」と呼ばれる背の高い伝統的な銅製のポットでいれたものだ。

「トルココーヒーと呼ぶ人もいるし、エルサレムコーヒーとかパレスチナ風コーヒーと呼ぶ人もいる。気分がいい日は、私はパレスチナ風コーヒーと呼んでいる」。1さじの砂糖がポットの底から沸き立つのを注視しながら、ネイダーさんはこう言った。「気分がのらない日はエルサレムコーヒーと呼ぶことにしている、政治色を出さないように」

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