事故か破壊工作か? バルト海の海底ケーブル切断、欧米当局者の見解割れる
(CNN) バルト海の海底でインターネットケーブル2本が相次ぎ切断された問題で、捜査関係者が謎の解明を進めている。欧州の当局者は破壊行為との見方を示す一方、米国の当局者は事故の可能性が高いと示唆している。
2本のケーブルはリトアニアとスウェーデンを結ぶ「BCSイースト・ウェスト」と、フィンランドとドイツをつなぐ「Cライオン1」。17日と18日に突然、損傷した。
欧州の指導者は直ちに疑念を表明。ドイツのピストリウス国防相は、「これらのケーブルが事故で切断されたとは誰も考えていない」と指摘した。
フィンランドとドイツの外相も共同声明で「深い懸念」を示し、「ハイブリッド戦争」の一環である可能性に言及。声明でロシアを名指しした。
こうした分析は根拠のないものではない。欧州の複数の国で発生した一連の不審な事案や放火、爆発などの破壊行為についてロシアの関与が突き止められたことを受け、ロシアが欧州に対してハイブリッド戦争を仕掛けているとの批判が出ている。
ケーブル破損の数週間前、米国はロシアが重要な海底インフラを標的にする可能性が高いと警鐘を鳴らしていた。ここ数カ月、欧州の海域でロシア船の不審な動きが観測されているほか、海底調査を任務とするロシアの秘密海洋部隊も大きく強化されている。
ただ、初期段階の分析に詳しい米当局者2人は19日、今回の損傷について、ロシアなどの国による意図的な行為とは見られていないと明かした。
むしろ当局者2人はCNNの取材に、付近を通過する船の錨(いかり)が引っかかった可能性が高いとの見方を示した。こうした事故は過去にも起きているが、17、18両日のように立て続けに発生したことはなかった。
クレムリン(ロシア大統領府)は20日、ロシアの関与を示唆する「滑稽」な見方を拒絶。「あらゆる出来事について何の根拠もなくロシアを非難し続けるのはばかげている」と述べた。
一方、スウェーデンとフィンランドの法執行機関はケーブルの損傷について、意図的なものだとの見解を示唆した。
スウェーデン検察は19日、破壊行為が疑われる事案への予備捜査に着手すると表明。20日にはフィンランド国家捜査局が、器物損壊や通信妨害の疑いで刑事捜査を開始すると発表した。
重要参考船
当局やインターネットウォッチャーから特に関心を集めている船が一つある。
クプラーの船舶追跡データによると、中国船籍の「伊鵬3」が切断時に両ケーブルを横切っていた。リトアニア軍によると、「BCSイースト・ウェスト」が切断されたのは現地時間17日午前10時ごろ。フィランド通信プロバイダーのシニアによると、「Cライオン1」の切断は現地時間18日午前4時ごろだった。
ばら積み貨物船の伊鵬3はロシアの港湾で数日間停泊した後、港を出航した。
デンマーク軍は20日、伊鵬3の近くに展開したことを明らかにしたが、追跡したかどうかは公表しなかった。
米当局者1人と西側の情報当局者1人はいずれも、ケーブル損傷に関与した可能性が高い船として、伊鵬3の名前に言及。ただし米国は今のところ、この船と、破壊行為を命じた可能性のある国家もしくは団体とのつながりを把握していない。
伊鵬3は現在、デンマークとスウェーデンの沖合約48キロ、カテガット海峡の公海上に停泊している。
伊鵬3はロシアの港に停泊した後、バルト海を抜けた。船舶追跡データでは、ガス・石油パイプライン4本や電線、建設中の他の通信ケーブルを含むバルト海の他の海底インフラを横切ったことが示されている。
中国外務省の林剣報道官は20日、伊鵬3について聞かれ、「状況について関知していない」と説明。中国は「常に旗国としての義務を果たしており、自国の船に対して関連法令の厳格な順守を求めている」と述べた。