ロシアの多弾頭ミサイル使用、冷戦期の抑止ドクトリンから逸脱 専門家

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ロシアのミサイル攻撃を受けた場所を歩く住民=21日、ウクライナ東部ドニプロ/Mykola Synelnykov/Reuters

ロシアのミサイル攻撃を受けた場所を歩く住民=21日、ウクライナ東部ドニプロ/Mykola Synelnykov/Reuters

(CNN) ロシアが21日に核搭載可能な弾道ミサイルを使用したことで、ウクライナ戦争は新たなエスカレーションを迎えた。

今回の攻撃はロシアと西側の対立における決定的な局面、そして潜在的な危険性をはらんだ局面を示すものでもある。

ロシアのプーチン大統領によれば、使用したのは多弾頭搭載型の弾道ミサイル。攻撃での使用は、数十年続いた冷戦期の抑止ドクトリンからの明白な逸脱となる。

専門家によれば、多弾頭を搭載する弾道ミサイルは「複数個別誘導再突入体(MIRV)」と呼ばれ、これまで敵を攻撃する目的で使用されたことはなかった。

米科学者連盟の核情報プロジェクトのディレクター、ハンス・クリステンセン氏は「私の知る限り、MIRVが実戦使用されたのは初めてだ」と語る。

弾道ミサイルは「相互確証破壊(MAD)」の正式名称で知られる核抑止の要に位置づけられてきた。

MADの前提にある考え方は、核による第1撃を切り抜けるミサイルが数発でもあれば、攻撃側の複数の主要都市を消し去る十分な火力が敵の戦力に残るというものだ。この点を踏まえ、攻撃側はそもそも核のボタンを押すのを思いとどまるだろう。

だが、クリステンセン氏を含む専門家は、MIRV化されたミサイルは第1撃を抑止するどころか、第1撃を招く可能性があると主張する。

目標に向かって極超音速で落下するミサイルを撃ち落とすよりも、発射前の段階で複数の弾頭を破壊する方が簡単だからだ。

ロシアによる21日の攻撃を捉えた映像には、複数の弾頭が異なる角度から目標へ落下する様子が示されている。それぞれの弾頭を対ミサイル兵器で撃退する必要があるが、それは最高レベルの防空システムにとっても気の遠くなるような見通しだ。

ウクライナ東部ドニプロに落下した弾頭は核弾頭ではなかったものの、通常の戦闘作戦で使用されたことで、ただでさえ緊迫した世界に新たな不確実性が加わるのは確実だ。

重要なことに、ロシアは発射前にミサイルの使用について米国に警告した。だが、事前警告があったとはいえ、プーチン政権が追加発射に踏み切れば、欧州各地で確実に懸念が高まる。これは核戦争なのか、抑止は消滅したのかと問う声が多く上がるだろう。

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