イスラエルが緩衝地帯拡張 ガザの住宅や農地を破壊、立ち入れば射殺も

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イスラエル軍がガザに緩衝地帯、「整然」と破壊

エルサレム(CNN) イスラエル軍がイスラエルとの境界に面したパレスチナ自治区のガザ住民の領土を、不毛の地に変えている。

装甲ブルドーザーが住宅を次々に破壊する。かつてフル稼働していた工場は、工兵が爆弾を仕掛けて計画的に解体していく。兵士がパレスチナ人住民の立ち入りを禁じて破壊していたのは、かつてその住民たちの生活と生計を支えた肥沃(ひよく)な農地だった。

イスラエル軍はここに幅1キロほどの緩衝地帯を敷設している。パレスチナ人は追放され、見えない境界線から足を踏み入れれば殺害あるいは銃撃される。何もかも正式には認められていない。

ガザに派遣されたイスラエル兵はCNNの取材やイスラエルの監視団体の聞き取り応じ、イスラエル軍が緩衝地帯を設けるために民間施設を破壊していることや、兵士が丸腰のパレスチナ人を銃撃したり殺害したりしていることを認めた。

国際法の専門家によると、こうした証言で明らかになったイスラエル軍の行為は、明らかな国際人道法違反にあたり、場合によっては戦争犯罪に該当する。

イスラエル軍はCNNの取材に対し、「イスラエルに隣接する保安区域に広範な軍のプレゼンス」を確立したことを認め、2023年10月7日のような事態の再発を防ぐためにはそうした措置が「不可欠」だと強調。イスラエル軍は「国際法に従って」行動していると主張した。

匿名で取材に応じた1等軍曹の「A」がガザ市シュジャイヤ地区の工業地帯に到着したのは23年12月。倉庫や工場の多くは既に破壊されていたが、それ以外の建物などはまだ残っていたという。

そうした建物を破壊することが自分たちの仕事だったとA軍曹はCNNに語り、「我々は一区画ごとに整然と破壊していった」と証言する。

破壊の目的はすぐに分かった。イスラエルはガザとイスラエルを隔てる緩衝地帯を拡張していた。

(23年)10月7日のハマス襲撃以前、イスラエルは境界フェンスから300メートル以内にパレスチナ人が立ち入ることを制限していた。しかし襲撃後、イスラエル軍はその範囲を約1キロに広げる計画を実行。境界から800メートルから1.5キロの領土を更地にして緩衝地帯を拡張した。

しかし国際法に詳しいオックスフォード大学倫理・法・武力紛争研究所のジャニナ・ディル氏によると、こうした民間財産の破壊を正当化するためには、正当な軍事目的や作戦上の目的が必要であり、民間財産を破壊することでしかそれを達成できないことが条件とされる。しかしイスラエル軍の行為にそうした必要性があるとは思えず、従って国際人道法違反に違反する可能性が大きいとディル氏は指摘する。

さらに、正当な軍事的必要性によって正当化されない市民の財産の意図的かつ広範な破壊は戦争犯罪に該当するとディル氏は話している。

キルゾーン

パレスチナ人が緩衝地帯に足を踏み入れれば死につながる。

複数の兵士が、武器を持っているかどうか、あるいは戦闘員と確認されたかどうかを問わず、この地帯でパレスチナ人に対する発砲を認める交戦規則があると語った。

「大人の男は殺す。射殺する。女と子どもは銃撃して追い払う」。イスラエル装甲部隊の1等軍曹は監視団体のインタビューにそう証言している。「予備役兵からは必ず、そのことが彼ら(パレスチナ人)に伝えられているのかという疑問が出る」

指揮官から明確な答えはない。しかし「彼らに伝えられているとは思えない」という。

緩衝地帯は衛星画像でははっきり見えるが、地上から境界を見分けるのは難しい。イスラエル兵の証言によると、複数のパレスチナ人がこの地帯に入って銃撃されたという。停戦中でさえも、複数のパレスチナ人が緩衝地帯付近の目に見えない一線を越えて射殺されていた。

装甲部隊の准尉は、パレスチナ人が食べられる野草のゼニアオイを摘もうとして銃撃された時の様子を語った。

「人々は袋を手に持っていたというだけで犯罪者扱いされた。袋を持って現れた男? テロリストだ。彼らはゼニアオイを摘みに来ただけだと私は思ったが、(軍は)いや、奴らは隠れている、と」。この時の相手は約800メートルの距離から戦車に砲撃されたが、かろうじて当たらなかったという。

天国のようだった果樹園

アブドゥル・アジズ・ナバヒンさんは40年の間、イスラエルとの境界から600メートルほど離れたガザ中部のブレイジ郊外にある祖先から受け継いだ土地で、オリーブやオレンジ、グアバを栽培していた。

息子のマフムードさんは結婚したばかりで3歳の娘がいた。

「まるで天国のようだった。私たちは満ち足りていた」とナバヒンさんは回想する。

しかし戦争が始まって間もなく避難を強いられ、今年1月の停戦の間に戻ってみると、自宅も農地もがれきと化していた。

「家は破壊され、樹木はブルドーザーでなぎ倒されていた」

息子のマフムードさんは昨年6月下旬、自宅近くでたき木を集めていたところを、イスラエル軍の戦車に砲撃されて死亡した。一緒にいたいとこも重傷を負った。

「イスラエル人は故意に彼らを狙った。ただ、たき木を集めているだけで、抵抗も戦闘もしていないと知っていたのに。焚き木を積んだ荷車がはっきり見えていたのに狙われた」とナバヒンさんは訴える。

「あそこへ行けば誰であれ殺される」

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