材料は昆虫、南アフリカの高級アイスを食す
(CNN) 炎天下の南アフリカで長い一日を過ごした後はアイスクリームがごちそうに思えるだろう。だが、そのアイスが虫の「ミルク」から作られていると知っても堪能できるだろうか。
ケープタウンを拠点とする新興企業グルメグラブは、アイスを活用して昆虫食の世界を紹介したい考えだ。
同社の高級アイスでは代替乳製品の「エントミルク」を使用。アメリカミズアブと呼ばれる熱帯昆虫の幼虫を混ぜて作っている。
国連は世界の食をまかなうためには2050年までに食料生産を倍増する必要があると予測しており、従来の家畜に代わる持続可能なたんぱく源として昆虫の育成を長年奨励してきた。
みんなアイスが大好き
2017年にグルメグラブを共同で創業したリア・ベッサ氏は「食品産業における昆虫への見方や、生産・活用のあり方を変えたい」と意気込む。
世界全体では1900種類超の昆虫が人間の食料になっていると推計されるが、まだ西洋料理の主流にはなっていない。
ベッサ氏はCNNの取材に「当初は猛反発を予想していたが、人々の受け止め方は極めて柔軟だった」「皆さんアイスクリームが大好きだ」と話した。
味はチョコやピーナツバター、クリスマススパイスなど。ベッサさんによると、ほのかに土の存在を感じることができ、これがアイスに「豊かでクリーミーな味わい」を与えているという。
ただし特徴は味だけではなく、栄養価も高い。グルメグラブ社によると、たんぱく質の含有量は乳製品の5倍とされる。
エントミルクは栄養豊富で環境への負荷も小さいという/Gourmet Grubb
ベッサ氏は「昆虫はもともと脂質やたんぱく質、ミネラルの含有量が多い」と説明する。アメリカミズアブの場合、たんぱく質や脂質は牛肉と同程度で、亜鉛や鉄分、カルシウムは牛肉をはるかに上回るという。
乳糖やグルテンは入っておらず、牛乳とは違って炭水化物や糖類も含まれていない。
環境に優しい
ベッサ氏は食品業界について、動物保護や環境面の懸念から厳しい視線にさらされていると指摘。「昆虫は感覚を持たない。繁殖に適した環境でのみ成長するため、動物福祉のニーズに応じた飼育環境になっている」と語る。
「昆虫の成長に必要な水や食料、スペースはごく少ない」「二酸化炭素排出量は従来の家畜に比べ少ないか皆無だ」
屋内の狭い制御環境下で育てられることから都市部での飼育が可能で、輸送に伴う負荷を減らすことにつながる。牛や穀物のように外的な気候パターンの影響を受けるリスクも小さい。
虫の飼育がごみの減少につながる可能性もある。
「アメリカミズアブの幼虫のような一部の昆虫には、幅広い有機物を餌とする能力がある」とベッサ氏。「たとえば、ビール醸造で出た穀物の残りかすも餌に使える」という。
食の未来?
今のところグルメグラブの供給先は南アフリカのみだが、世界の昆虫食市場は2023年までに12億ドル(約1270億円)に達すると予想されている。
アイスクリームのほかにもさまざまな料理に利用できるという/Gourmet Grubb
グルメグラブは6月、期間限定でコンセプト店舗を開店。メニューにはアイスに加え、昆虫パウダーのパスタ、ヒヨコ豆と黒い幼虫で作った揚げ物、モパネガの幼虫のフムスなどが並ぶ。
ベッサ氏は「人口増加を支えられる代替手段を見つけ、維持可能で環境に優しい畜産システムを生み出す必要がある」と語る。
「エントミルクによって真に違いを生み出し、従来型乳製品の影響を減らすためには、世界的な規模で受け入れ消費してもらうしかない」