レジスタンス運動で高齢期の睡眠の質向上 新研究
(CNN) 不眠症に悩む高齢者にとって、運動、特に筋力を高めるためのレジスタンス運動を取り入れたトレーニングが有効であることが最近の研究で明らかになった。
不眠症は、特に年を重ねるにつれて大問題になりうる。
3月に学術誌「BMJ Family Medicine and Community Health」に掲載された研究論文の執筆者によると、高齢者の30~48%が眠気を訴え、12~20%が不眠の問題を抱えているという。
また睡眠不足は、うつ病や不安症、メタボリックシンドロームなど、さまざまな疾患に関係している、と同論文は指摘している。
この研究は、1996年から2021年の間に行われた25件の研究を統合・解析したメタ分析で、60歳以上の2170人の運動と睡眠のデータを調査したという。
同論文の執筆者は「本研究の結果から分かったことは、全ての運動の中で、筋力強化トレーニングが(睡眠の質を高める上で)最も効果的であり、次いで効果的なのが有酸素運動とコンビネーショントレーニングということだ」とした上で、「ただし、これらの運動はどれも睡眠の質を向上させる」と付け加えた。
レジスタンス運動が効果的な理由
睡眠心理学者のジェイド・ウー博士は、レジスタンス運動を行う高齢者の睡眠の質が上がるのは当然だと語る。同氏は上記の研究に関与していない。
ウー氏は「本来、睡眠は日中に体に生じたダメージを癒やすためのもの」とした上で、「レジスタンス運動は文字通り筋肉に損傷を与えるため、これらの筋肉を修復し、成長させるために睡眠が必要だ」と付け加えた。
「また新しい体の動きを学ぶことにより、脳内に新たな経路が構築され、睡眠を促進する。我々は、睡眠のある段階で、新たに学んだことのリハーサルを行うからだ。つまりレジスタンス運動を行うことにより、非常に効果的に睡眠が取れるのだ」(ウー博士)
またセントルイス大学医学部の非常勤教授シャリニ・パルティ博士は、過去の複数の研究で、レジスタンス運動には、血圧の低下、血糖値の改善、コレステロールの改善、下肢筋力の向上、うつ病や不安の軽減、生活の質の向上などの効果も見られたと指摘した。同氏は上記の研究に関与していない。
とはいえ、不眠症を改善する上で重要なのは、行っている運動の種類ではなく、継続的に行える形を見つけられるかどうかだろう、と語るのは、メリーランド州コロンビアにあるジョンズ・ホプキンス大学睡眠・ウェルネスセンターの睡眠神経学者レイチェル・サラス博士だ。同氏は上記の研究に関与していない。
サラス博士は「レジスタンス運動は、激しい運動ではなく、転倒の危険もないため、多くの人々にとって良い選択肢かもしれない」とした上で、「ただ高齢者が行う場合は考慮すべき注意点がある」と付け加えた。
パルティ博士によれば、運動を続けていれば、睡眠の改善が見られるはずだという。「運動によって身体だけでなく、精神も鍛えられる。これが眠りにつく能力や睡眠を持続させる能力、さらに睡眠の質の改善にプラス効果をもたらす」