「幽霊船団」で自然が復活、1次大戦の歴史眠る 米マローズ湾
保護区指定に向けた動きを後押しする海洋考古学者のドン・ショメット氏は、静かな自信をみせる。NOAAの当局者をこの場所に連れてきたときは、目の前に光景に驚いていたという。マローズ湾では約36平方キロの場所に、考古学上の記録に残る廃船が185隻あり、歴史的な船が集まる場所としては西洋でも有数だ。
ショメット氏にはマローズ湾の「幽霊船団」についての著書がある。愛着を持つようになったきっかけは、1950年代に父とキャンプに来たときのことだ。
ショメット氏は「自分はまだ10代になったばかりだった」と当時を振り返る。南北戦争時代からある埠頭でキャンプをし、夜はゴースト・ストーリーを聞かされた。翌朝になると、川は霧に包まれていた。
「川を下るとある船夫に会った。君たち幽霊船団を見に行くのかいと聞かれた。背筋が凍りそうになった」と述懐。10分ほどすると、霧の中から船首が立ち現れてきた。若い頃の忘れられない思い出だ。
シュメット氏は数年後、この場所の調査に着手。南北戦争時代の密航船の存在を突き止めた。1928年に建造され、第2次世界大戦で就役した「アコマック」もここに眠っていた。