11年目の真実――同時テロ犠牲者の最期のメモ、家族の元へ
同時テロからすでに10年がたっていた。昨年8月、検視当局から妻のデニースさんにメモを確認してほしいとの連絡が入り、デニースさんはアーンストさんとともに出向いた。
「文字を見た瞬間、彼の筆跡だと分かった」と、アーンストさんは振り返る。「そこで私たちは悟ったんだ。彼が精一杯闘いながら亡くなったということを」――アーンストさんは必死で涙をこらえたという。
3人の娘たちには、メモのことをすぐに話さなかった。父親が即死でなく、苦しい死に方をしたかもしれないと知るのはつらいだろうとの心遣いからだ。
デニースさんは今年、末娘が大学を卒業するのを待って、娘たちにメモの話をした。「お父さんはとても怖かったでしょうね」と言う末娘に、デニースさんは「いいえ、お父さんは希望を持ち続けていたのよ」と話したという。
アーンストさんによると、ランディさんの書いた文字は最期の様子を物語っている。「彼は震えていなかったし、恐れてもいなかった。ただそこにいる12人の救助のために、やるべきことをやろうとしていたのだ」と、アーンストさんは力を込めた。