米軍、イスラエルに全面地上侵攻の回避促す イラク戦争の教訓引き合いに
ワシントン (CNN) パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を準備するイスラエルに対し、米軍関係者はイラク戦争で米国が反乱勢力を相手に闘ったような激しい市街戦を回避するよう促している。民家を一軒一軒しらみつぶしにする血みどろの戦闘にイスラエルが引き込まれるのを避けるためだという。事情に詳しい複数の情報筋がCNNに明らかにした。
イスラエル入りしている米軍の顧問団はイスラエル国防軍(IDF)に対し、ガザ地区を実効支配するハマスを撃退する様々な戦略の立案を支援している。その際に特に引き合いに出しているのが、イラク戦争有数の激戦となった2004年のファルージャの戦闘で得られた教訓だ。
ガザ地区に全面地上侵攻を仕掛けた場合、人質や民間人を危険にさらし、この地域の紛争をさらに激化させる可能性がある。このため米軍顧問団は地上侵攻ではなく、精密空爆と標的を絞った特殊急襲作戦を併用するようイスラエルに求めている。
米軍顧問団はまた、米軍主導有志連合が過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)からイラク北部モスルを奪還した際の戦略も参照している。モスル奪還作戦では特殊部隊への依存度がさらに高かった。ハマス同様、ISISはモスル全域にトンネルを建設して民間人を人間の盾として利用しており、奪還に向けた戦闘は予想より難しく長いものとなった。
こうしたメッセージを伝えるため、バイデン政権は海兵隊のジェームズ・グリン中将を派遣し、IDFに戦術攻撃の準備に関する助言を行っている。グリン氏は海兵隊特殊作戦コマンドの元司令官で、イラクでの市街戦に関して豊富な経験を持つ。特にファル-ジャでは、反乱勢力との極めて激しい戦闘で指揮を執ったという。
ハマスが今月7日にイスラエルへのテロ攻撃を仕掛けて以降、米当局者の間では、ガザ地区への地上侵攻を図るイスラエルの戦略は十分煮詰められておらず、多大な犠牲を出したり、ガザ地区の無期限占領につながったりする可能性があるとの懸念が高まっている。
米国はまた、全面地上侵攻を仕掛ければ、今なおガザに拘束されている人質200人以上や、逃げ場のない民間人を危険にさらす可能性がある点なども考慮するようイスラエルに要請している。
バイデン政権内の懸念をよく知る情報筋は、全面地上侵攻の実施に関して「イスラエルに次の段階の戦略があるようには思えない」と語った。