バンス氏は共和党の「お荷物」、ハリス氏の新たな攻撃材料に
(CNN) 米民主党の候補指名が確実視されるハリス副大統領の陣営は、共和党のJ・D・バンス上院議員(オハイオ州選出)をトランプ前大統領の「お荷物」と捉え、それを自身の副大統領選考過程と候補者の公開審査で強調しようとしている。
政治経験が比較的浅いバンス氏の副大統領候補指名は、ハリス氏にトランプ氏を攻撃する新たな機会を与えている。ハリス氏の顧問らによると、そのメッセージはバンス氏が「奇妙」だとか、物議を醸す見解を持っているということにとどまらず、大統領に何かあったときにバンス氏がその座を引き継ぐべきではないということ、そしてトランプ氏がバンス氏を選んだことは大統領候補者としてさらなる疑問を生じさせるということだ。
この戦略は、78歳の大統領に何か起きた場合、バンス氏が大統領に就任する可能性がいかに高いかを強調することでトランプ氏の年齢に焦点を当てる手段でもある。同時に民主党の副大統領候補者の一部が行っているように、バンス氏の経歴にけちをつけることは、ハリス氏を「DEI(多様性、公平性、包摂性)枠」と攻撃する共和党は民主党の候補者に異なる基準を適用していると主張する手段でもある。
ハリス陣営の幹部ミッチ・ランドリュー氏はCNNに対し、黒人女性と白人男性の候補者がいるにもかかわらず誰も白人男性には経験を尋ねなかったと語った。
民主党の副大統領候補者らは、子どものいない女性についての物議を醸す発言やトランプ氏に対して一変した態度、東部アパラチア地方出身であることのアピールへの疑問をやり玉に挙げてバンス氏を攻撃している。一方でハリス陣営は、バンス氏と自身の副大統領候補者たちとの違いを際立たせようとしている。
ランドリュー氏は39歳のバンス氏を「これまでの米国副大統領候補の中で特に準備が整っていない人物のひとり」だと形容。35歳で米国生まれの市民という憲法で定められた最低限の出馬要件をかろうじて満たしているに過ぎないと話す。
同氏は、ビジネスどころか何も運営したことのないバンス氏に対し、世界で最も強力な国の国内政策と国家安全保障政策を即断する能力があるかどうか私たちはどうやって知ることができるのかと問うのは当然だと語った。
2016年に上院議員に初当選したハリス氏が18年に大統領選への出馬準備を始めるまで上院で過ごした期間は、22年に初当選したバンス氏と同じくらいだ。一方でハリス氏の副大統領候補として名前が挙がる人物(数人の知事、上院議員、1人の閣僚を含む)は、バンス氏よりも政府で長く勤務し、さまざまな役職、ビジネス、軍、および米航空宇宙局(NASA)で指導的経験を積んでいる。
ルイジアナ州の元下院議員でバイデン氏の顧問および選挙陣営幹部も務めるセドリック・リッチモンド氏は、バンス氏が一夜にして大統領になる立場に就くことを考えると「恐ろしい」と語った。
ハリス氏の副大統領候補に選ばれることを望む数人もこのメッセージを繰り返した。
候補の1人であるJ・B・プリツカー・イリノイ州知事は、22年の出馬前に仕事を転々としていたバンス氏に言及。これまでの経験上、仕事を続けられない、あるいは1、2年以上仕事を続けていない人に何らかの問題があることは明らかだと断じた。
インディアナ州サウスベンド市長を務めた後、4年前に大統領選に出馬したピート・ブティジェッジ運輸長官も自身の公開審査のインタビューで同様の点を指摘。同氏は政府機関での勤務年数が比較的短いことは問題ではないとしながらも、行政機関での上級職としての経験が皆無で、公職全般での経験もほとんどないことは本当に懸念される点だと話した。
副大統領候補の決定に自身の経験を重視
副大統領候補の決定はハリス氏とその限られた側近の間で行われる。
ハリス氏の顧問によると、バイデン氏が4年前にハリス氏について最終検討していたときと同じように、ハリス氏は誰が自身の勝利を後押ししてくれるかを最も重視しなければならないと考えている。
ハリス陣営の広報担当者は「ハリス氏は米国国民に奉仕し、彼らの自由を守り、彼らの未来のために戦う資格と覚悟のある副大統領を選ぶだろう」と述べた。また、トランプ氏がバンス氏を選んだのは20年の選挙結果を覆そうとするトランプ氏の企てをバンス氏が支持したからだというハリス氏の主張を繰り返し、対比を強調してみせた。
トランプ氏の年齢と健康に疑問
バイデン氏が選挙戦から撤退したことで、トランプ氏は今やはるかに高齢の候補者となった。同氏は太り気味で、ファストフード好き、運動嫌いとして知られている。自身のすべての医療記録を公開したこともない。
ハリス氏の側近にしてみれば、そのことがトランプ氏による副大統領候補の選択をさらに切迫した問題にしている。
トランプ氏の報道官は、民主党が同氏の年齢を強調していることについて尋ねられると、「年齢の問題ではなく、能力の問題だ」と切り返した。ほんの数週間前に民主党が展開していた主張と似ている。
それでも保険統計上の現実は変わらない。バイデン氏を擁護しなくなった今、民主党はこの現実をはるかに熱心に語ろうとしている。
プリツカー氏は「トランプ氏の判断力に疑問を抱かざるを得ない。彼は自分が何歳か分かっている」「だから、何かあれば大統領の座に就く副大統領に、経験がほとんどない人物、特に何かを運営する経験がほとんどない人物を選ぶという考えは人々の心に多くの疑問を生じさせるはずだ」と語った。