トランプ氏が大統領令で紙ストロー排除、専門家からも「部分的」に賛同の声
ニューヨーク(CNN) 米国では毎日5億本のストローが使われている――。よく知られているものの、最も科学的とはいえない推計ではそうなっている。
ストローを最も購入しているのは連邦政府だ。購入されたストローは国立公園や連邦政府機関の建物、大使館などで使われている。
トランプ米大統領はこのほど、バイデン前政権の環境への取り組みを覆した。バイデン政権は連邦政府機関の建物で、ストローのような使い捨てのプラスチックを廃止した。一般的な代替品が紙ストローだった。
トランプ氏は大統領執務室で、紙ストロー廃止の大統領令に署名した際、「我々はプラスチックのストローに戻る。(紙ストローは)使えない。壊れてしまう。熱い何かだと爆発する。長くもたない。数分、場合によっては数秒だ。とんでもない状況だ」と語った。
大統領令では、連邦政府機関に対して、連邦政府機関の建物内で「紙ストローが提供されないよう」指示している。
多くの米国人はトランプ氏の紙ストロー嫌いに同意している。トランプ氏を批判する人の中にも賛同者がいる。
しかし、ストロー業界の一部の人たちにとって、議論は「紙対プラスチック」を超えたものだ。
「紙ストローは使えないし、良い解決策でもないというのは同感だ」。そう語るのは、環境にやさしい堆肥(たいひ)化が可能な食品包装の会社「グッド・スタート・パッケージング」のケン・ジャコバス最高経営責任者(CEO)。「この大統領令で残念なのは、ストローといえば紙かプラスチックしか選択肢がないと消費者に信じ込ませるために紙ストローをある種の目くらましに使っていることだ。ストロー業界にとっては、もう過去の話なのに」
グッド・スタート・パッケージングは飲食店や連邦機関の施設向けに、ストローや食器、持ち帰り用の容器を製造している。同社のストローはキャノーラ油から作られており、陸や海で生分解される。
トランプ氏は第1次政権の2020年、プラスチック廃棄物に対する国際的な意識を高め、海洋でのごみと戦うことを目的とした法案に署名した。
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ホワイトハウスの大統領執務室で一連の大統領令に署名するトランプ大統領/Andrew Harnik/Getty Images
トランプ氏は大統領執務室に戻った今回、「プラスチックがサメに大きな影響を与えるとは思わない。サメは海の中でムシャムシャ食べている」と語った。
スターバックスなど大手企業の一部はプラスチックストローの提供をやめている。同社は現在、求められれば堆肥化可能なストローを提供している。
今回の大統領令では、1本あたり5~12セント(約7~18円)する紙ストローの価格を引き下げることも目指している。環境問題に意識的な候補者の選出に取り組む団体「クリーン・ウォーター・アクション」によれば、プラスチック製のストローの価格は1本あたり2セント未満。だが、グッド・スタート・パッケージングのジャコバス氏によれば、同社の生分解性のストローの価格は3セント弱だ。
「こうしたすべてのものを処分する埋め立て地を見つけるのに苦労している。リサイクルされるプラスチックは10%未満だ。残りは埋め立て地に送られ、埋め立て地の空きが不足しつつある。実際に経済的な責務となりつつある」(ジャコバス氏)
紙ストローは費用が高く、構造が脆弱(ぜいじゃく)にもかかわらず、毒性が低いと考えられている。だが、プラスチック汚染の削減を目指している「プラスチック汚染連合」のジャッキー・ヌニェス氏によれば、さまざまなメーカーの紙ストローを試験した結果、紙ストローは人々が思っているほど安全には飲めないことがわかったという。
ヌニェス氏は「皮肉なことに、市場に出回っていた紙ストローの多くは、自分でも使いたくないような低品質のもので、有害な染料や接着剤がたっぷり含まれていた」と語った。ヌニェス氏によれば、有害な紙ストローの大部分は中国から輸入されていた。
ジャコバス氏もヌニェス氏も、再利用可能なストローが環境的にも収益の面からも最適としつつ、博物館や国立公園、病院などの大規模な施設にとっては非現実的だとの見方を示す。そして、トランプ氏の大統領令はプラスチック製のストローに再び扉を開く一方で、プラスチック製の皿や持ち帰り用容器、カップなどの扉も開く可能性がある。
「トランプ氏は現在、使い捨て製品の大規模な購入者である連邦政府の施設に対し、環境に非常に有害な昔ながらの製品である発泡スチロールの購入を認めている。それが、焦点を当てるべきことだ。ストローなんて誰も気にしていない。時すでに遅しだ」(ジャコバス氏)