はしか感染拡大、ケネディ米保健長官はワクチンではなくビタミンA重視 SNSの誤情報に懸念
(CNN) 米テキサス州西部ではしかの感染拡大が続く中、ケネディ保健福祉長官はビタミンAによる治療を重視する姿勢を示している。ステロイド剤ブデソニドや抗生物質クラリスロマイシン、タラ肝油の使用が「良好な結果」をもたらすとの情報にも言及した。
医師らはこうした情報発信について、ワクチン接種促進の取り組みを損なう恐れがあると指摘する。インターネット上では既に、これらの治療法に関する誤情報が出回っている。
米国では2000年にはしかウイルスの根絶が宣言されており、多くの医師ははしかを診た経験がない。はしかの感染に特化した抗ウイルス薬は存在しない。
米イエール大公衆衛生大学院のトップ、メーガン・ラニー氏は「ビタミンAはワクチンの代わりにはならない」と語る。
ビタミンAは視力や免疫にとって重要で、世界保健機関(WHO)では、はしかと診断された全ての子どもと成人に対して2回のビタミンA投与を推奨している。米疾病対策センター(CDC)の指針でも、入院を必要とするような重症の子どもにはビタミンAを投与すべきだとしており、年齢に応じた投与量を定めている。
ケネディ氏はFOXニュースに掲載された2日の寄稿で、ビタミンAが「はしかによる死亡率を大幅に減らす」ことを示す研究に言及。4日のFOXニュースの取材でも、テキサス州西部におけるCDCの対応状況や、ビタミンAとDを豊富に含むタラ肝油の使用について論じた。
ただ、ビタミンAが最も有効なのは特定の欠乏症がある患者のはしか治療であり、ケネディ氏が言及した研究の多くは、ビタミンA欠乏が広がる低所得国のデータに基づいたものだ。
ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターの上級研究員、アメシュ・アダルヤ氏は「これは実際に有効な情報だが、元の文脈から切り離されている」と指摘する。
「ビタミンA欠乏を伴うはしかの症例では、ビタミンAの補給で命が助かるケースがある」とアダルヤ氏。こうしたケースでは、ビタミンAがウイルスに対抗する力をもたらし免疫系を強化する。
だが米国の文脈では、はしかへのビタミンAの使用に関するデータは「弱い」。こう指摘するのは、テキサス小児病院ワクチン開発センターの共同責任者などを務めるピーター・ホーテズ氏だ。
ホーデス氏は「テキサス州西部のはしか流行に関する現在の議論では、ビタミンAが果たす役割はそれほど大きくない。私たちが本来重視すべきこと、つまり子どもへのワクチン接種から注意をそらしてしまうからだ」と説明する。
米国でははしかの症例が全般的に少なく、ビタミンAに関するCDCの最新ガイドライン以外に決まった治療法はない。ケネディ氏が言及した薬のひとつ、抗生物質クラリスロマイシンは肺炎などの二次性細菌感染を防げる可能性があるが、証拠は限定的だ。ブデソニドは多用途のステロイド剤だが、はしか患者への有効性ははっきりしない。
米国小児科学会は先週、ビタミンAではしかを予防できるとする誤情報に対抗する声明を発表した。
はしかの流行が拡大するテキサス州ラボックの小児科医、レズリー・マザラル氏は「ビタミンAが推奨されるのは入院患者だけで、しかも特定の用量のみだ」「この点を非常に明確にしたい。ワクチンを打たず子どもに大量のビタミンAを与えている人もいると思われるからだ」と説明。SNS上ではビタミンAに関する誤情報が目立ち始めているといい、ビタミンAははしかの予防には使えないと訴えたいと話した。