中国の少数民族文化の現状、観光商業化と消えゆく言語
中国貴州省大利(CNN) 中国貴州省の深い山の中にある小さな村、大利に住むシー・ウェンチャンさんは、小学校教員歴39年のベテラン。しかし自分の母語は、300万人が使っているにもかかわらず、学校で教えたことはない。
シーさんの仕事は、村に住む少数民族トン族の住民に、標準中国語を教えること。ただし教え始めは地元の言葉に切り替えることもある。
「読み書きを習い始める時から漢の言葉の学習が始まる」とシーさんは言う。漢は中国の人口の90%を占める民族で、政治的、文化的主流派だ。
村を出て仕事を探すために標準語を学ぶことは大切だが、自分たちの言葉が失われてしまうのではないかとシーさんは危惧する。「自分たちの言葉がなくなれば、昔から受け継いできたたくさんの伝承や物語は存在しなくなる。それは大きな損失だ」
伝統の言語を脅かしているのは標準語を優先する教育制度だけではない。近年の好景気に押され、多くの住民が村を離れて沿岸部の工業都市で働き、母語よりも標準語の方が流暢になって戻ってくる。そうした人たちは、「父」や「母」など日常語にさえ標準語を使うようになっているといい、「以前はそんな言葉を使う人はいなかったのに」とシーさんは嘆く。