ISISの身代金要求を巡る6つの疑問 日本人人質事件
2.ISISが拉致を戦略のひとつとしているのはなぜか
ほかのテロ集団と同じ発想だ。拉致は資金調達につながり、身代金が支払われない場合は「われわれを甘く見るな」「一般市民にも危害を加える」などと公言する機会になる。
ISISのような集団の広報戦略を合理的に説明するのは困難だ。しかし人質殺害場面のような映像によって、ISISは無情で挑発的な集団であり、その過激思想に従わない者は兵士であろうと市民であろうと皆殺しにするというイメージが強化されることは確かだ。
資金調達という側面はそれほど目立たないものの、やはり重要な要素であるだろう。米財務省が12年に出した推計によると、ISISと共通点を持つ国際テロ組織アルカイダとその関連組織は、過去8年間で1億2000万ドルの身代金を手に入れた。米紙ニューヨーク・タイムズも14年7月の調査報道で、アルカイダ系組織が08年以降に取った身代金は総額1億2500万ドル、13年だけで6600万ドルに上ったと伝えている。
ISISについてこのような数字は出ていないが、それはISISが身代金を取らないという意味ではない。原油の売り上げや犯罪収益、支配地の住民から取り立てる税などに加え、身代金はISISにとって重要な資金源になっていると考えられる。
3.最も多くの身代金を支払っているのはどの国か
自国がどれだけの身代金を支払っているかを触れ回る国はない。身代金目当ての誘拐犯がその国をさらに狙うようになるからだ。とはいえ、一部の国が支払ったことを示す情報はある。
ニューヨーク・タイムズ紙が14年夏、フランスからの報道として伝えたところによると、アルカイダ系組織に支払った身代金が最も多いのはフランスで、その額は08年以来、5600万ドルに及ぶ。オマーンとカタールが2位で2000万ドル、スイスが1200万ドル、スペインが1100万ドル、オーストリアが300万ドルを支払っているという。
フランスが取り引きした相手はアルカイダだけではない。14年4月には、ISISに拘束されていた同国のジャーナリスト4人が解放されている。