香港の屋上スラム 再開発の陰で広がる住宅格差
こうした屋上スラムが建設され始めたのは1950~60年代。トタン屋根で覆った掘っ立て小屋のような粗末な作りだが、半世紀以上にわたり、低賃金の移民労働者らの住居として重要な役割を果たしてきた。
香港統計局の最新の調査によると、2011年の屋上スラムの住人は1588世帯3474人となっており、2001年の1万6000人から大きく減少した。この背景には香港の土地不足がある。近年、ショッピングモールなどへの再開発が進む中、古いアパートは次々に取り壊されている状況だ。
フォン氏が住んでいるのは、香港で最も貧しく人口が集中した地域のひとつ。フォン氏が住む屋上スラムには他にも約40人が暮らしているが、皆同様に政府から退去勧告を受けている。10年以上ここで生活してきた人もおり、他に行く当てはない。
「狭いアパートに住むよりは屋上のスペースの方が広々としている」。こう語るのは21歳の女子大生だ。母親と弟と共に屋上家屋に暮らしている。当初はネズミやゴキブリが気持ち悪かったが、今はもう慣れたという。