香港の屋上スラム 再開発の陰で広がる住宅格差
フォン氏によると、屋上家屋はビルの最上階の家主によって非公式に賃貸に出されている。一方、女子大生の場合、母親が誰に家賃を払っているのか見当もつかないという。
エコノミストはこうした香港の住宅不足について、一部の富裕層に資産が集中し、格差が拡大していることの証左だと指摘する。米経済誌フォーブスの2014年の長者番付には香港から45人が選ばれた。
その資産の合計は2140億米ドルに上り、香港の域内総生産(GDP)の約8割を占める。一方、40万世帯は貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。
米調査会社デモグラフィアが昨年初めに発表した調査によると、香港の住宅価格は世界最高となっており、住宅価格の中央値は402万4000香港ドルだった。こうした住宅価格の高騰は香港経済の好調さを示すものだが、足元の建設現場で働くフォン氏のような人々にまで恩恵が及んでいるとは言い難い。
将来的に、女子大生の一家は公共住宅に移ることを希望しているが、順番待ちの列は長い。一方のフォン氏は、ビルが取り壊される日が来るまで屋上に住み続けるつもりだという。