北朝鮮が発射と主張の「極超音速ミサイル」、事実なら東アジア軍事情勢に変化も<下>
実験を加速させる北朝鮮
「極超音速ミサイル」の実験は北朝鮮による9月で3回目のミサイル実験だった。
北朝鮮はまず、長距離巡航ミサイルの実験を9月11、12両日に実施したと発表。続けて16日には、北朝鮮と韓国の両国が弾道ミサイル実験を行い、すでに世界有数の不安定地域である朝鮮半島の緊張が高まった。
そして28日、北朝鮮によるミサイル実験の報道が流れた直後に、北朝鮮の金星(キムソン)国連大使がニューヨークの国連総会で演説。北朝鮮と韓国の分断を嘆くとともに、この地域における米国のプレゼンスを批判した。
金氏は米国が周辺地域での軍事演習によって北朝鮮に「敵対」していると批判しつつ、米政府から友好的な申し出があれば、北朝鮮は「いつでも積極的に応じる用意がある」とした。
一方で、「全世界が知っているように、そして米国が非常に心配しているように、我々の戦争抑止力の中には強力な攻撃手段が含まれている」とも述べた。
極超音速ミサイルがこうした抑止力の一部になるかどうかはまだ分からない。
シンガポールの研究者、ドリュー・トンプソン氏は「もし北朝鮮がミサイルで運搬可能なほど小型の信頼できる核弾頭を開発し、その弾頭とミサイルの実験を実施できれば、そのとき彼らは信頼性のある能力を持っていると実証したことになる」と指摘する。
現時点ではトンプソン氏は懐疑的だ。
「北朝鮮が極超音速システムを手にするのは現時点では夢物語に思える」(トンプソン氏)
ただ、韓国・梨花大学のリーフ・エリック・イーズリー教授は、北朝鮮の極超音速ミサイルは他国のものほど正確である必要はないかもしれないと指摘する。
「北朝鮮がたとえ初歩的なものであっても極超音速ミサイルに核弾頭を搭載することに成功すれば、それは危険な兵器となる。近距離にあるソウルに脅威を与える目的であれば、極めて高い正確性は必要ないからだ」(イーズリー氏)