日米共同訓練に対抗措置の脅し、ロシアは「神経過敏な状態」と専門家
日本の行動は「予測可能で透明性がある」
専門家からはロシア側が現在、神経過敏な状態にあり、日本に対して不満をぶちまけている状況だとの指摘が出ている。
テンプル大学のジェームズ・D・J・ブラウン教授(政治学)は「日本と米国はいつもと違うことを何もしていない。このレベルの反応を本当に引き起こすようなことは何もない」と語る。
シンガポール国立大学リー・クアン・ユー公共政策大学院の上級リサーチフェロー、ドリュー・トンプソン氏もこうした見方に同調し、米国との軍事協力の強化は日本側が実施するものとして理解できるとの見方を示す。
「日本はゆっくりと自国の周辺地域における安全保障上の脅威に目覚めつつある。日本はそれを民主主義国家として矛盾のない、予測可能で透明性のある方法で進めようとしている」とトンプソン氏は語る。
米海兵隊との空中機動訓練を行うなか、陸上自衛隊水陸機動団の演習が実施された=3月15日、静岡県御殿場市/David MAREUIL/Anadolu Agency/Getty Images
日本に拠点を置く米海軍第7艦隊の報道官、ヘイリー・シムズ中佐は4月初旬の日本海での共同訓練について「いつもの2国間の行動だ」と述べ、「我々の訓練は、両国間の協力の強固さを示すことによって、通常戦力での抑止力の信頼度を高めている」と説明した。
だがロシア側は違う見方をしているようだ。
ブラウン氏は「現状はロシア側が神経をとがらせている状況、近辺で起きる行為を常に潜在的に攻撃的と捉える傾向をまさに示していると思う」と語る。
同氏はさらに、日本が英国やフランスなどNATO諸国との協力関係を深化させていることが、太平洋での緊張悪化につながっているとも指摘する。ロシアはこうした国々と欧州で争っている。
「ロシア側が本当に嫌っていることの一つとして、日本が近年、米国以外の国々との協力を強化していることが挙げられる」と同氏は語る。
ロシアの挑発
ロシアはこの数年、日本周辺でその力を誇示してきたと専門家は指摘する。
慶応義塾大学の森聡教授(現代国際政治学)は、この数カ月で北方領土での軍事演習や日本海での潜水艦発射巡航ミサイルの試験など、ロシアによる多くの挑発行為があったと語る。
森氏はロシアが日本の近くで軍事行動を活発化させているのは、恐らくウクライナ侵攻の最中でも極東地域で行動できる能力を誇示する狙いがあるとの見方を示す。
トンプソン氏によると、ロシアによる威嚇はさらに以前から起きていた。同氏は、この数年間で核兵器搭載可能なロシアの爆撃機が日本の領空付近を飛行したり、中国と空や海での共同演習など協力した事案があったと言及。昨年には中ロの艦船が本州を周回する行動も見られた。
同氏は「これは日本がこうした力学に反応している状況であり、それはロシアと中国の軍事協力強化から始まった」と語る。
さらに「それが日本の防衛計画や政治的な供給を推進させている変化だ。直近のロシアによる威嚇への反応ではない」「それは自国に対する軍事力行使を抑止するために、自国の能力を高めるという日本の戦略の正当性を示すものとなっている」とも指摘する。