プリゴジン氏は決して機会を逃さない。ここ数カ月、意外にも政治的野心を表に出している傭兵(ようへい)組織のリーダーは、公の場でロシア軍上層部と辛辣(しんらつ)な丁々発止を繰り広げ、ロシア製ドローンやドローン防衛の近代化にロシア国防省は「全く手を打っていない」と非難した。
「多少なりとも理解のある人間として言わせてもらえば、こうした(ドローン)計画には何年も前に対処しておくべきだった――今となっては敵から数年も遅れをとっている。もしかすると数十年の開きがあるかもしれない」
今回もプリゴジン氏がロシアのセルゲイ・ショイグ国防相に怒りをぶちまける絶好のタイミングになるかは定かでない。遠隔操作されたドローンが厳重警備されているロシア上空にどうやって侵入したのか、どこから発射され、誰が攻撃命令を下したのか、疑問は残る。
ロシア国防省では、防空システムが作動してドローンはすべて破壊されたと主張している。3機は電子戦で制圧し、5機は地対空ミサイルが撃ち落としたという。ロシア国営タス通信からたびたび取り上げられているロシア人のドローン専門家デニス・フェドチノフ氏は、攻撃はロシアの防空システムを探るために行われたのではと推測している。
「おそらくモスクワ市内の防空システムに探りを入れ、弱点を洗い出すのが空襲の目的だろう」
だが発射された経緯はさておき、今回のドローン攻撃がロシア軍の顔に泥を塗ったのは間違いない。間近に控えたウクライナの反転攻勢の兆候が見られる中、果たして今回の攻撃はメディアも注目するさらに大規模な攻撃の前ぶれなのだろうか?
◇
この記事はCNNのネーサン・ホッジ記者の分析記事です。