エルサルバドルの「メガ刑務所」とは、トランプ氏がベネズエラ人「ギャング構成員」を移送

（ＣＮＮ） エルサルバドルにある巨大刑務所「ＣＥＣＯＴ」は、トランプ米政権がギャング構成員とされるベネズエラ人数百人を強制送還する方針を決める以前から、悪名高い施設だった。

施設の正式名称は「テロリスト監禁センター」。収容能力は４万人で、物議を醸すエルサルバドルの国内犯罪取り締まり策の最大の象徴となっている。

現在、ここには大量殺人犯や「最悪中の最悪」と評されるギャング構成員など、ベネズエラで最も凶悪な部類に入る犯罪者が収容されている。過酷な収容環境は悪名高い。

ＣＮＮ取材班は最近現地を訪問し、「８０人ほどの収容者を想定して建設された」監房に受刑者が１日２３時間半も閉じ込められている様子を報道。「家具は金属製の多段ベッドだけで、シーツも枕もマットレスもない。むき出しの便器とセメント製の洗面器、洗濯に使うプラスチック製のバケツ、水を飲むための大きな容器があるだけだ」と伝えた。

現時点で推定約１万～２万人が収容されているとみられ、直近ではトランプ政権が先週末に国外退去処分とした２６１人が新たに加わった。そのうち２３８人はベネズエラのギャング「トレン・デ・アラグア」の構成員、２３人はギャング組織「ＭＳ１３」のメンバーとされる。

「世界一クールな独裁者」を自称するエルサルバドルの強権的な指導者、ブケレ大統領は米国からの送還者をＣＥＣＯＴに収容すると申し出、その見返りとして米国から６００万ドル（約８億９８００万円）の支払いを受ける前例のない取引を結んだ。エルサルバドルの刑務所制度には年間２億ドルかかっており、この資金が制度維持に役立つ見込みだ。

過酷な環境

米国からの送還者は１６日午前の到着と同時に、この刑務所の容赦ない方針を思い知らされることになった。

警官らは手足を拘束された送還者を施設まで護送する際、頭を腰の高さまで押しつけた。新入りの受刑者たちはその後、看守が髪を剃（そ）ったり大声で指示を飛ばしたりする間、ひざまずかされていた。

エルサルバドル政府が公開した映像には、見るからに動揺した受刑者たちに対し、職員の一人が「我々は君たちがこの瞬間から服従する規律を厳格に実行する。刑務所の警備要員には絶対的な敬意を払うこと。分かったな」と怒鳴る姿が映っている。

こうした荒々しい迎え入れ方は、数年前に受刑者の収容を始めた当初から、この刑務所の代名詞となっている。

エルサルバドル政府が２３年に公開した画像には、当初移送されてきた受刑者の一部が、白いボクサーパンツ１枚に丸刈り頭という姿にされ、自分たちの監房へと走らされる姿が写っていた。

２４年後半に現地を取材したＣＮＮ取材班はこうした過酷な扱いについて、「意図的なもの」と形容。収容者たちは１日３０分間しか狭い監房から出られず、「プライバシーも快適さも一切なく」、照明は２４時間３６５日点灯していたと報じた。

「彼らに作業はない。本やトランプ、自宅からの手紙も持ち込めない。食事の時間には監房の外に皿が積まれ、鉄格子越しに受け取る。肉が提供されたことは一度もない。毎日３０分の休憩はもっぱら、監房から中央の通路に出て、集団で運動したり聖書を読んだりすることに充てられる」（ＣＮＮ取材班）という。

家族や友人との面会は許可されず、中には一生出所できない可能性に直面している者もいる。

エルサルバドルのビジャトロ治安相は、ＣＮＮの訪問時に「更生すると信じているが、それは一般的な犯罪者に限った話だ」と語った。