援助削減で妊産婦の命の危険増大、過去20年の進歩が帳消しに WHO
(CNN) 世界保健機関(WHO)は7日、妊産婦医療に対する援助の削減で過去20年の進歩が帳消しになり、妊娠中や出産時に死亡する女性が増える恐れがあるとの見方を示した。
WHOによると、妊娠や出産で死亡する女性は世界で2000~23年の間に40%減少した。しかし23年の時点でもまだ推定26万人が命を落としている。
そうした中、人道援助の削減によって、複数カ国で妊婦が「重大な影響」に直面しているとWHOは指摘する。
突如として資金を失った各国は、妊婦や新生児、子どもの健康のために欠かせないサービスの縮小や診療所の閉鎖、医療従事者の解雇などを強いられている。出血や妊娠中毒症、マラリアの治療薬など、妊産婦の命にかかわる医薬品や救命物資の供給にも支障が出ているという。

アフガニスタン・カブールの診療所で妊婦の診察をする助産師/Victor J. Blue/Bloomberg/Getty Images
最も影響が大きいのは、最大の援助国だった米国の援助削減だった。トランプ政権は1月、国際開発局(USAID)に対する資金拠出をほぼ全額カットした。
欧州もロシアとの緊張の高まりを受けて防衛予算を増額する中で、2月には英国、フランス、オランダ、ベルギー、スイスの各国が援助予算の削減を表明した。
「世界的な援助削減で妊婦に欠かせない治療や出産時に必要な支援が受けにくくなり、最も弱い立場にある妊婦がさらなる危険にさらされている」。国連児童基金(ユニセフ)のキャサリン・ラッセル事務局長はそう訴え、「世界は緊急に助産師、看護師、地域医療従事者に投資し、母親と赤ちゃんが生き延びて成長できるチャンスを守らなければならない」と呼びかけている。