ロシア、欧州以外への原油輸出もより困難に 運搬船の「保険」禁じた欧州の制裁
保険を武器にする
保険の問題は石油精製企業や輸入者だけの問題ではない。
「無保険や保険不足の船舶は、主要な港や、ボスポラス海峡やスエズ運河といった海上輸送の要衝に入ることが許されない」。ドイツを拠点とするアナリストのセルゲイ・バクレンコ氏は、カーネギー国際平和基金に寄せた投稿でそう記した。
金融機関も制裁違反に当たる行為を恐れている。万一違反すれば、規制当局から巨額の罰金を受ける可能性がある。
ロンドンのコンサルティング会社エナジー・アスペクツの地政学部門トップ、リチャード・ブロンズ氏は「これは精製企業やロシアの生産者だけが絡む取引ではない。こうした他の全ての関係者が存在する」と指摘する。
一方ロシアは、保険の禁止に対抗して、国家保証を付与する方策で回避できると公言している。こうした保証は理論上、従来の保険の代わりに利用できるものとなる。ロイター通信は、国営ロシア国家再保険会社がロシア船舶の主要な再保険会社になると伝えた。
前ロシア大統領で安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ氏は、通信アプリの「テレグラム」への投稿で、「この問題は解決できる」「保険の問題は第三国と国際的合意を結ぶフレームワークで、国家保証を通じて終結できる。ロシアは常に責任のある、頼りになるパートナーだ」と述べた。
こうした回避策で、ロシアの輸送が完全に断たれる状況にはならなそうだ。前述のブロンズ氏も「(保険禁止は)破壊的なものとなるが、ロシアの全輸出を消し去るものにはならないだろう」と語る。
ただ、ロシアの提示する方法が十分な解決策になると誰もが考えるわけではなさそうだ。特に、厳しい制裁を受けるロシアが、いざ保険金の支払いが必要な場面で本当にその能力があるのかという疑問はつきまとう。
ブロンズ氏は「より多くの疑念が出てくるだろう。それが原因で購入を希望する国の範囲は狭まると考えられる」と語った。