絶滅の危機に瀕したスコットランドのカキ、ウイスキー蒸留所が救いの手
蒸留所が復活に一役
プロジェクトは、一見起こりそうもない協力関係の産物だ。ドーノック湾の岸には、グレンモーレンジィ蒸留所の古い建物が佇む。同蒸留所はこの地を故郷と定め、170年以上にわたってスコッチウイスキーを作り続けてきた。「蒸留所は倉庫を拡張し、事業も勢いに乗っていたが、どうすれば環境負荷を減らせるか、周辺の状況を改善できるかを知りたがっていた」と、サンダーソン氏は振り返る。
グレンモーレンジィは持続可能性を高める取り組みの一環として、17年に嫌気性消化槽を設置。発酵時に残る麦芽の搾りかすといった副産物を浄化している。
「従来、副産物は湾に排出していた」。蒸留所の責任者、エドワード・トム氏はそう語る。「現在は副産物の97%を浄化してから排出している。残りの3%を浄化してくれるカキの養殖場は、我々が現行のDEEPプロジェクトの一環として導入しているものだ」
グレンモーレンジィ蒸留所の責任者、エドワード・トム氏/
カキは1日およそ240リットルの海水を濾過(ろか)できる。その過程で、蒸留所由来のあらゆる有機副産物は浄化される。またカキの存在は、他の生物の生息環境を形成する役割も果たす。
「カキの個体群は海底に構造物(カキ礁)を作り出す。これによってできたくぼみや割れ目の中で、他の生物が暮らすようになる。特定の種類の魚やカニについては、こうした生息域に関連して数を増やしているのが確認され始めている」(サンダーソン氏)