北極圏の海水を凍らせ、海氷の厚みを増すプロジェクト 有望な結果も科学者は「深刻な影響」懸念
北極の海氷は温暖化により縮小している。1980年代半ば以降、厚い多年氷の量は95%減少。残っている氷は年数が浅く薄い。一部の科学者は、北極では2030年代に氷のない夏が訪れる可能性があると予測する。
海氷の減少は世界的な問題だ。その明るく白い表面は太陽のエネルギーを宇宙に反射し、地球を冷やす。海氷が溶けると、その下に露出した暗い海が吸収する太陽光線が増える。地球温暖化が氷を溶かし、融解した氷が温暖化を加速させる破滅のループに陥る。
リアルアイスの計画では、海氷の下に電動の水中ポンプを設置し、海水を海氷上にくみ出す。くみ出された水は巨大な水たまりのように氷上にたまって凍り、氷の層を作りだす。
リアルアイスのチェッコリーニ共同経営責任者(CEO)によると、このプロセスは氷上の雪を除去し、断熱層を取り除くことで、海氷の下側でさらなる成長を引き起こす。
同社は今年1月、ケンブリッジベイでテストを開始。チェッコリーニ氏によると、約4000平方メートルの氷について、1月から5月の間に対照地域と比較して平均約50センチ厚みが増した。
同地での新たなテストは11月に始まり、これまでの対象範囲は4万平方メートルに及ぶ。テスト開始から10日間で、対象区域では氷がすでに10センチ厚くなったという。
同社は年明けと5月に改めて氷の厚みを測定する予定だ。これまでの結果から、氷は40~79センチほど厚くなると見立てているという。
最終的な計画は水中ドローン(無人機)を使ってプロセスを自動化することだ。水中ドローンは長さ約2メートルでグリーン水素を動力とし、加熱ドリルで下から氷に穴を開ける。