なぜアップルは中国で愛されるのか
興味深いことに、アップルの中国での成長はすべてハードウェアから来ている。
コンテンツ販売サービス「iTunesストア」を通じた楽曲、ビデオ、書籍、アプリなどのダウンロード販売は皆無に等しい。これは政府とは無関係だ。iTunesのコンテンツについては、アップル自らがチェックする仕組みを除き、検閲は存在しない。
iTunesでの販売が振るわないのは、どちらかといえば、中国人が知的財産に対価を払いたがらない習慣に起因する。
さらに悪いことに、アップルの制約をかわす「脱獄」の方法を紹介しているウェブサイトも多数あり、ユーザーは簡単に別の場所から無料コンテンツをダウンロードできてしまう。
アップルが中国市場向けに、価格を抑えたiPhoneの投入を検討するかもしれないとのうわさもある。5000人民元(約7万円)もするiPhoneに手が届かない消費者がまだ何百万人もいることを考えれば、廉価版のiPhoneは理にかなっているように思える。
だが、それはやめておいた方がよさそうだ。
市場シェア拡大のためだけに利益率を犠牲にするのは帳尻が合わない。もし廉価版を出せばアップルの高級イメージは損なわれ、エリートたちの愛着にも陰りが出るだろう。
本稿は、中国の中欧国際工商学院マーケティング学部教授、ジョンウェン・チャン=蒋炯文=氏による特別寄稿です。