VR技術を手術に活用、珍しい症例の赤ちゃん救う
エゾン医師と話し合った後、ムニス医師は自らグーグル・カードボードを購入し、自分のオフィスでいじってみた。ムニス医師はアプリを使って、ティーガンちゃんの心臓の画像を自分のiPhoneにダウンロードし、バーク医師に見せた。
その画像は、普段彼らがパソコンの画面上で使用している3D画像とは似て非なるものだった。グーグル・カードボードを使用することにより、心臓をあらゆる角度から眺めることができ、まるで心臓の中に入ったかのように心臓内部の構造を確認できた。
12月10日、生後4カ月のティーガンちゃんはニクラウス小児病院の手術台の上にいた。
バーク医師が直面した最初の課題は、いかにしてティーガンちゃんの心臓に到達するかだった。通常、心臓は胸の中心部にあるため、医師は心臓に到達するために、胸の上部から下部に向かって切開する正中切開(せいちゅうせっかい)を行う。
しかし、ティーガンちゃんの心臓は通常の位置にはなく、胸のかなり左に寄っていた。バーク医師は、グーグル・カードボードを使用する前は、正中切開を行った上に、さらに胸の中央から左方向に切開する「クラムシェル切開」を行う必要があると見ていた。
バーク医師は、ティーガンちゃんはその手術に耐えられないと懸念した。
ティーガンちゃんをこの窮地から救ったのがグーグル・カードボードだった。仮に3Dプリンターを使用していたら、バーク医師が入手できたのはティーガンちゃんの心臓の模型だけだっただろう。