一生に一度の巡礼を エチオピアの聖地を行く
ザイディ氏によれば地下トンネルには象徴的な意味合いがある。通路の一つは同氏の推定で300メートルと非常に長く、真暗闇に覆われている。入り口と出口は1つずつしかなく、後戻りはできない。
外に出ると文字通り教会の玄関口に行き当たる。同氏が聞いたところによると、この通路は暗闇から光へ、つまり天国へと至る経験を表現しているという。
ザイディ氏は巡礼者や教会の聖職者と共に過ごす経験を「時間をさかのぼったかのよう」と形容する。近代とは無縁の場所であり伝統だ。一部の儀式では人々が密集した状態で立ち、どの方向にも動けない。儀式が終わるまでその場所にとどまり、気を失った場合でも倒れることはないという。
巡礼者らは夜になると、ろうそくの光や星明かりを頼りに集団で祈る。大半の人はそのまま夜明けまで祈り続ける。ザイディ氏は「あの夜は私が人生で目にしたものの中で最も魅惑的な光景だった。自分は宗教的な人間では全くないが、これらの儀式を見ていたら感動のあまり涙を流していた」と語る。
巡礼者らが翌日、町を離れると、ラリベラは再び元の規模に戻り、比較的無名の遺跡としての状態が翌年まで続く。
ただ、記憶は残る。ザイディ氏は「もし、人間の存在に感動したい、宗教に感動したいと思うのなら、ラリベラを訪れてほしい。信仰や精神性、これらの人々の優しさに涙を流すほど感動しないのであれば、何にも感動できないだろう。本当に素晴らしい体験だ」と力を込めた。