イスラエルの防空システム、ヒズボラとの全面戦争で圧倒される恐れ 米当局者
(CNN) レバノンの親イラン組織「ヒズボラ」とイスラエルの交戦が全面戦争に発展した場合、米国はイスラエルが国内北部に配備している「アイアンドーム」などの防空システムが圧倒される可能性があると深く懸念している。米当局者3人がCNNに明らかにした。
当局者らによると、ヒズボラが保有する数多くのミサイルやドローン(無人機)に、アイアンドームで対抗しきれない可能性があるとの懸念はイスラエル側からも米国に伝えられているという。地上と空からのレバノン侵攻をイスラエルが準備する中で、こうした懸念は高まるばかりだ。
当局者らは19日、イスラエルがヒズボラとの戦争に備えて、人員や兵器などをパレスチナ自治区ガザ地区南部からイスラエル北部に移す計画であることを米国に伝えてきたとCNNに明らかにした。
政府高官は「少なくとも一部」のアイアンドームが「圧倒される」と米国は想定していると述べた。
イスラエルの当局者は、ヒズボラが主に精密誘導兵器を使って大規模な攻撃を仕掛けてきた場合、アイアンドームでの迎撃は厳しくなる可能性が高いとの見方を示した。ヒズボラは何年にもわたってイランから入手した精密誘導兵器やミサイルを備蓄しており、この点についてはイスラエルはこれまで繰り返し懸念を示してきた。
ヒズボラは今月初めに、イスラエル北部の軍基地にあるアイアンドームを攻撃し、損傷を与えているところをとらえたものと主張する映像を公開した。この映像についてイスラエルのメディアは、アイアンドームへの攻撃が確認された初めてのケースとみられる、と報じた。
イスラエル軍はアイアンドームへの損傷は一切確認されていないとしている。だがイスラエルは北部に配備しているアイアンドームが特に脆弱(ぜいじゃく)である可能性があると考えており、ヒズボラの攻撃が高度化されていることに驚いていると米国に伝えてきた、と当局者2人は述べた。
ヒズボラは今週、ドローンで撮影されたものとする9分にわたる別の映像を公開し、そこには機密性の高いイスラエル軍の基地が映っている。
別の米当局者は、全面戦争となった場合、イスラエルが最も必要とする支援は、米国が供与することが想定される追加の防空システムとアイアンドームの補充であることをCNNに認めた。
アイアンドームはイスラエルの防衛の要であり、米議会調査局によると、米国はこれまでに29億ドル(約4600億円)を拠出している。イスラエル軍によると、ガザの武装組織「イスラム聖戦」が昨年仕掛けたロケット弾攻撃では95.6%の精度で撃ち落としたという。そのため、ヒズボラの攻撃がアイアンドームを圧倒する事態となれば、イスラエル軍兵士や市民の命が危険にさらされることになる。