靖国参拝――戦没者の追悼と近隣諸国からの非難と
「中国や韓国の政府が抗議すれば、参拝した政治家に注目が集まるともいえる。そして政治家は有権者に、日本はいじめられている、内政干渉だと訴えることができる」と、キングストン教授は指摘。外国からの非難が政治家の追い風になるという、ある意味奇妙な現象がここに生じるという。
南山宗教文化研究所の奥山倫明所長によると、靖国神社は日本国民の約半数に支持されている。最近の東アジア情勢を反映したナショナリズムの高まりで支持者はさらに増えている可能性があり、その場合は靖国参拝が再選の助けになると考える政治家もいるだろうと、奥山所長は指摘する。
今月日本を訪れた米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は、靖国神社ではなく、近くの千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れて献花した。同墓苑には、日本国外での無名戦没者の遺骨が埋葬されている。両長官の献花は、靖国参拝に代わる戦没者追悼の形を提案したと受け止められた。
「安倍首相はそのメッセージを受け取ったようだ」と、キングストン教授は語る。「首相は春、夏、秋とも靖国参拝を見送った。参拝すれば近隣諸国との関係だけでなく、最も重要な同盟国である米国との関係まで悪化させてしまうことが、首相にも分かっているのだろう」というのが、同教授の見解だ。