コロナ禍で世界の1億人近くが貧困に、貧富の格差は拡大
香港(CNN Business) ディパリ・ロイさん(20)は食べるためのお金さえなかった。
バングラデシュの首都ダッカでディパリさんと夫のプラディップさんが勤めていた縫製工場は2020年春、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けて大量の人員を解雇。ロイさん夫妻も仕事を失い、生活費を切り詰めるため、地方への転居を余儀なくされた。
世界銀行の推計では、20年のパンデミックのために世界で9700万人が、1日2ドル(約230円)未満で暮らす貧困状態に陥った。
この状況はほとんど改善していない。世銀は21年6月のブログで、新型コロナを原因とする世界の貧困は、年内に改善に向かうだろうと予想した。
しかしバングラデシュ北部の村にあるトタン小屋で取材に応じたディパリさんは、「家に戻れるだけの稼ぎは到底ない」と話す。
夫妻は生計を立てるため、起業を目指して融資を受けようとしたが、最初は誰も助けてくれなかった。プラディップさんは農業の仕事を見つけようとしたが、農家からは過酷な天候に耐えられないだろうとして拒絶された。
何よりも「食事が最大の問題だった」とディパリさんは言う。当時妊娠中だったにもかかわらず、配給制の食事を1日に1回しか食べられない時もあったといい、「どうしていいのか分からなかった。ただ座って、食事を届けてもらうのを待つしかなかった」と振り返った。
世銀によると、世界の最貧層は昨年、20年以上ぶりに増加に転じた。