プーチン氏から見た世界、よみがえる中世の物語
「ロシアの世界」
「プーチン氏がかねて提唱しているこの概念はいわゆる『ロシアの世界』というもので、ロシア正教に根差している」。米ウェズリアン大学で歴史を専攻するビクトリア・スモルキン准教授はCNNにそう語る。
「ロシア語話者がいて、ロシア正教のある地域はどこでもロシアの世界だ。そこでは既存の政治的国境を認めない」(スモルキン氏)
プーチン氏の構想を支持するキリル総主教もまた、ウクライナを自身のロシア正教の不可欠にして歴史的な一部分とみなしている。米カリフォルニア大学リバーサイド校の歴史学教授、ゲオルク・ミヒェルス氏はそう指摘する。
同大学の運営するメディアのインタビューに答えたミヒェルス氏は、「開戦を受け、キリル総主教は説教を行い、ウクライナとロシアの一体性は神から与えられたものだと強調した」と説明。
「キリル総主教はウクライナの『邪悪な勢力』を非難した。そうした勢力が躍起になってこの一体性を破壊しようとしていると訴えた」(ミヒェルス氏)
今月6日、キリル総主教はモスクワで行った説教でさらに一歩踏み込み、この「邪悪な勢力」を明確にプライド・パレードと結びつけた。
同総主教によれば、ウクライナでの戦争の本質とは「いわゆる特定の価値観に対する根本的な拒絶」に他ならない。その価値観は「今日、大国と主張する者たちが提示している」。すなわち西側諸国だ。
自分がどちらの側に立っているかという「試金石」は、自国が積極的にプライド・パレードを開催しているかどうかだと、キリル総主教は語った。
「(神の)法に背く事態が起きたなら、この法を破る者たちを黙って見ていることなど絶対に不可能だろう。彼らは聖なるものと罪なるものとの境界線を曖昧(あいまい)にする。ましてや罪を模範として助長したり、人間による行動の手本の一つなどと持ち上げる者たちに至ってはなおさら我慢ならないだろう」「こうした問題の周囲で今起きているのが、現実の戦争だ」(キリル総主教)