プーチン氏から見た世界、よみがえる中世の物語
キエフの重要性
ウクライナの首都キエフは、プーチン氏とキリル総主教の両者にとって極めて象徴的な都市だ。それは中世のキエフ大公国を支配したウラジーミル1世とのつながりに由来する。現在のウクライナとロシア両方の一部にまたがる領土を治めたウラジーミル1世は、988年ごろキリスト教に改宗した。
「現在主流派をなすロシアの民族主義者の見方によれば、ウラジーミル1世は史上初めてとなるロシア人の国家及びロシア正教会の創建の父だった。国家と教会は有益な共生関係を形成し、キエフはロシア文明の揺籃(ようらん)の地となった」。そうミヒェルス氏は書いている。
同氏はCNNに対し「プーチン氏はウラジーミル1世をロシアの救世主とみなしている」「同氏にとって、キエフとクリミアは神聖なロシア人の土地だ。ウラジーミル1世はクリミアで洗礼を受けた」と述べた。
キエフ大公国がキリスト教化する物語に基づいて、プーチン氏とキリル総主教はウクライナをロシアの一部と主張している。
「プーチン氏は、神から与えられた物事の自然な秩序を自分の手で回復しているのだと訴える。そこではウクライナ人とロシア人は常に1つの国民であり、誰もがそれをわかっている。なぜなら彼らは皆キエフ大公国に起源を持つうえに、全員がロシア正教徒だからだ」(スモルキン氏)
キリル総主教の演説もこうした考えを強化する内容で、西側の大国がロシアとウクライナの歴史的な一体性に干渉していると主張した。
スモルキン氏は、キリル総主教が掲げるロシア人の民族主義的学説を次のように特徴づける。「もしウクライナ人が自分たちをロシア人と異なる人々だと考えているとすれば、それは単に彼らが西側によって惑わされているからに他ならない。西側は、これほど仲の良いきょうだいの間に不和の種をまいた」
クリミアへの侵攻後の2016年、ウラジーミル1世の像がモスクワの中心部に建てられた。これより前の主要なウラジーミル1世像は1888年、キエフの中心に建てられていた。