米からウクライナに供与のロケット砲、ロシア軍の新たな問題に
在欧米陸軍の元司令官、ベン・ホッジス氏はヘルソン州への攻撃があった後にツイートし、「ロシア軍で最も不人気な仕事とは? それは弾薬を取り扱う仕事だ」と指摘している。
米国防総省は8日、155ミリ口径の砲弾1000発をウクライナに供与すると発表。ただし当局者によると、これは正確性が増した新型の弾薬だという。ウクライナは1日3000発のペースで155ミリ弾薬を消耗しているが、ハイマースの場合と同様に、砲弾の正確性が上がればそのぶん必要な砲弾の数は少なくて済む。
国防総省の当局者はハイマースが戦況を変えていると主張し、「ウクライナはハイマースシステムを使うことで、ロシアの前進能力を著しく阻害している」と説明。「もしロシアがウクライナに持久戦で勝てると思っているなら、考え直す必要がある」と付け加えた。
ロシアの軍事記者ユーリ・コテノク氏も先ごろ、ハイマースを「深刻な脅威」と評し、「ヘルソン州とザポリージャ州の解放された地域、ドネツク人民共和国(DPR)、ルガンスク人民共和国(LPR)、そしてロシア領もハイマースの射程に入る可能性がある」と指摘した。
テレグラムで30万人近いフォロワーを持つコテノク氏は、ロシアの防空網を改善するとともに、移動中あるいは配備中のハイマースを狙った攻撃も改善する必要があると指摘。「もしこの状況が続くようであれば、敵の意思決定拠点を攻撃することが必要になる」としている。
パレットの重要性
ロシアの問題の一つは、弾薬の運搬方法かもしれない。そこで重要になるのが、目立たない存在であるパレットだ。
ロシア軍のトラックには重い弾薬を持ち上げるクレーンを備えたものはほとんどない。弾薬がパレットに搭載されて運ばれるケースはまれで、積み降ろしは手作業で行われる。ウクライナでは老朽化したソ連のトラック「ZIL」が多数目撃されている。
この方法で兵器や弾薬を運ぶと手間と時間がかかり、敵の監視部隊が輸送の場面を発見する機会を増やしてしまう。対照的に、英米の軍隊は弾薬の多くをパレットに積むか、コンテナで運ぶかしている。
ウクライナ東部でここ3カ月間に見られるように、ロシアの戦争のやり方は大規模砲撃を頼りに目標を徹底破壊し、そのうえで前進するというものだ。ロシアの軍事ドクトリンでは常に、火砲や多連装ロケットシステム、迫撃砲の大量使用を強調してきた。それには絶え間ない補給が必要となる。一部の専門家の計算によると、ロシアはドンバス地方で少なくとも1日7000発の砲弾やロケット弾を使用しており、これ以上に使う日も多いとされる。
ウクライナ東部ルハンスク州の軍政トップ、セルヒ・ハイダイ氏は13日、「ロシア軍は砲撃をやめていないが、砲弾の在庫を節約している可能性が高い。我々の新たな長距離兵器によってロシアの補給が寸断されているためだ」との見方を示した。