よみがえるブラックパンサー、米社会に根強い影響
党員が言葉の利用にたけていたのは、書物が人々を変える強さを知っていたからだ。多くの党員が、主に刑務所の中で本を読みあさり、それを通じて生まれ変わった経験を持っていた。クリーバーはベストセラーの回想録「氷の上の魂」を出版、ニュートンも無学の状態から博士号を取得するまでに至った。公民権運動指導者のマーチン・ルーサー・キング牧師もパンサー党の指導者の演説ぶりには感心していたという。
パンサー党の独特の言葉づかいは最終的に、音楽や政治の分野で変革をもたらしたとする見方もある。同党がなければヒップホップは存在しないと考える人は、不当な扱いへの反発、けんか腰の言動、都市を発祥地とする点といった同党の特徴がすべてヒップホップの感性の元になったと見ている。作家のカリル・ファン氏は「伝説的なヒップホップ歌手トゥパック・アマル・シャクールの母親が同党の党員だったのも偶然ではない」と語る。
ファン氏はまた、共和党から大統領選に名乗りを上げたトランプ氏が言葉を武器としているのもパンサー党の影響が見てとれると指摘。「トランプ氏はパンサー党の構成員と同様の戦略を多用している。より大胆な言動を取ることで、一段と注目を集める手法だ」という。
2.大胆な態度をとる
パンサー党がポップカルチャーにもたらしたものとしては、革ジャケットやベレー帽のほかにも、大胆な振る舞いが挙げられる。
ある種の気取った、自分を誇示する威勢のいい態度は、ダンクを決めた後で挑発的な言動を取る米プロバスケットボールNBAの選手や、皮肉なしに「自分は神だ」と宣言するラップ歌手のカニエ・ウエストなど、米国文化のあらゆる側面に浸透している。オバマ米大統領が批判者について語るとき、肩からほこりを払う仕草をするのもちょっとしたその現れだ。